あなたにとってどんな素晴らしいアイディアがあっても、
それを適切に伝える「話力」がないとその能力は生かされません。
 (16)「スピーチは結果と原因をさきに…」

  日常の生活の中で、気の合ったもの同士のとりとめのない会話というのは楽しいものです。ところが、そういう時の様子を観察してみると、その内容の多くは結果や結論を必要としない状況説明であることに気付きます。逆にいえば、内容に責任をもたなくていい場合ほど話しに夢中になれるということでしょう。    

 「昨夜、友達と飲みに行ったの。巨峰の酎ハイおいしいよね」  「そうそう、巨峰といえば種の無いのがあるし、ワインを造ったりね」  「ワインといえばやっぱりフランスかしら。私はイタリアのも好きよ」  「それにイタメシって意外とヘルシーだって言うんじゃない」といった展開です。 これでも、生活をエンジョイするためには必要な潤滑油とも言えるでしょう。

問題なのは、大事な会話の場合にも尾を引いてしまうことなのです。 特に内容に責任をもたなくてはならないケースでは、「結果と原因を先に、理由と状況は後で」の話法でもって決めて欲しいのです。とりわけ“理由”は言い訳である場合が多いのですから尚更。冒頭で延々とやられたのでは堪りません。

(17)「大勢の人前で話すコツ」

 パーティーや結婚披露宴など「大勢の人前で話すにはどうすれば」と悩む人は少なくないでしょう。そんな人に私は「聴衆は何人であろうと話す相手は1人と思いなさい」とアドバイスすることにしています。

実は、何人聴いているのか判らない放送の場合でも相手は1人と思って話すのが原則なのです。上手なパーソナリティのディスクジョッキーなどを聴いていて「この人は自分だけに話している」と感じることがありませんか。話す側からいえば、まさに思うツボというわけです。    その手法はいとも簡単です。 「皆様お元気でしょうか…」よりも「あなたお元気…」と呼びかけられたほうが親しみがわくでしょう。ですから、聴衆が10人でも100人でも1000人でも相手は1人。言葉遣いも当然「1対1」ということになります。

そのような気持で人前に立つと気分も相当楽になるものです。その意味では1対1の会話と全く同じ、そうすれば聴衆1人ひとりの顔がはっきり見えてくるものです。

 
(18)「スピーチには自己暗示も有効」
特に独り語り(ストレートトーク)には、語句を伝えるだけでなく、心理学を応用して話力を強化することも重要な要素といえます。その1つが自己暗示をかけることによって話力を向上させるという方策なのです。。

 誰でも過去の体験の中で、上手く話せたと思えることが何度かあるものです。その時の服装や身に着けていたものを思いだして、再び同じものを持っていくなどです。プロ野球の監督でさえ試合の日には、勝った試合の時と同じ下着を身に着ける人があると聞きます。

 ステージに上がったら「自分は上手いんだ」と信じることも有効な手段といえます。さらに「自分は本番に強いんだ」と言い聞かせておくことも大切です。どんな相手でも、どんな場所でも、ちゃんと話している自分をイメージしておきましょう。とかく錯覚の多い人間ではありますが、スピーチにも自己暗示を上手に応用したいものです。

                                      朝日新聞掲載より            
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